大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

千葉地方裁判所 昭和61年(わ)236号 判決 1986年7月31日

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官中尾勇出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社三栄を罰金二五〇〇万円に、被告人薗田享一を懲役一年六月に処する。

被告人薗田享一に対し、この裁判確定の日から四年間、その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社三栄(以下「被告会社」という。)は、千葉県船橋市二和東五丁目二二番地六号に本店を置き、遊技場の経営等を営業目的とする資本金四〇〇万円の有限会社であり、被告人薗田享一(以下「被告人」という。)は、被告会社の監査役であり、かつ、同会社の実質的経営者として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上収入の一部を除外して簿外の架空名義預金をする等の方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五七年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億三六九九万六四三六円であったのにかかわらず、昭和五八年二月二二日、同県市川市北方一丁目一一番一〇号所在の所轄市川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三二三四万二八八三円で、これに対する法人税額が一二四四万三四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額五六三八万二九〇〇円と右申告税額との差額四三九三万九五〇〇円を免れ、

第二  昭和五八年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億六〇七五万二五一四円であったのにかかわらず、昭和五九年二月二二日、同県船橋市本町二丁目二七番二五号所在の所轄船橋税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二五五五万七九四九円で、これに対する法人税額が九二二万三四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額六六〇〇万五三〇〇円と右申告税額との差額五六七八万一九〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告会社代表取締役倉口孝一及び被告人の当公判廷における各供述

一  被告会社代表取締役倉口孝一及び被告人の検察官に対する各供述調書

一  被告人に対する収税官吏の質問てん末書二通

一  薗田喜代子の検察官に対する供述調書

一  収税官吏作成の脱税額計算書説明資料、売上高調査書及び受取利息調査書

一  検察事務官作成の報告書二通

一  登記官作成の商業登記謄本

判示第一の事実について

一  収税官吏作成の脱税額計算書(自昭和五七年一月一日至昭和五七年一二月三一日)

一  押収してある伝票元帳二綴(昭和六一年押第八二号の1及び2)

判示第二の事実について

一  収税官吏作成の脱税額計算書(自昭和五八年一月一日至昭和五八年一二月三一日)

一  押収してある総勘定元帳三綴(昭和六一年押第八二号の3ないし5)

(法令の適用)

被告人及び被告会社の判示各所為は、各事業年度ごとに法人税法一五九条一項(被告会社についは、さらに同法一六四条一項)に該当するが、被告会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、被告会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内で罰金二五〇〇万円に、被告人については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役一年六月に各処し、被告人に対し、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件犯行は、脱税額が一億円余、脱税率が約八二パーセントにものぼるところの脱税事犯、その手口も売上管理用のコンピューターを操作して売上の一定率を除外し、これによって生じた裏資金を仮名預金にする等悪質である。また、その動機についても全く自己中心的であり酌量の余地はないこと等を考慮すると、その刑事責任は重いと言わなければならない。

しかしながら、被告会社は、当然のこととはいえ重加算税及び延滞税の賦課等の制裁を既に受けていること、被告人には前科前歴はなく、被告人は現在では本件につき十分反省していること等被告人に有利な事情を考慮して主文掲記のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 太田浩 裁判官 沼里豊滋 裁判官 井上薫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例